平成22年度は、研究代表者が、関連文献の精査と、資料のデータをまとめる作業を実施した.そこでは、これまで収集している資料・文献、さらには今後収集対象となる資料の範囲の確定を行ってきた。本研究が主に対象とするソマリアや「ソマリランド」の「ディアスポラ」に関わる研究に限定せず、他の地域においてもみられるディアスポラと本国の政治・経済関係を広くサーヴェイする作業を実施した。 また、今年度当初は米国、あるいはカナダでの調査を予定していたが、他の研究プロジェクトにおいて本研究で次年度以降予定していたケニアにおける調査を実施する機会を得たので、時間の制約もあり、8月に2週間にわたりケニアの首都ナイロビと南アフリカのヨハネスブルグ近郊を中心とした聞き取り調査や資料収集を実施した。 この調査研究の成果の一部は、未刊ではあるが平成23年年度公刊予定の複数の論文集に掲載される予定になっているほか、複数の学会の研究大会で報告予定である。そこに見え隠れするのは、「ディアスポラ」の様々な関与のあり方が、ソマリアにおける国家形成においてきわめて両義的な役割になっている点である。つまり、経済的な関与は、ソマリ国内での政経の上でさわめて重要である一方、それが同時に「紛争経済」の持続にもつながる点、そして政治的な関与は、支援する欧米諸国との連関では評価されているものの、国内における正統性を十分に樹立できにくい状況が生まれているということである。
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