本年度は、夏期休暇中に10日ほどイギリスに赴き、イギリス公文書館、大英図書館、ロンドン大学政経学院(LSE)図書館において資料の収集を行った。この際、数年前に資料調査を行った際よりも検索機能が格段に改良されていることに気づき、計画を若干変更して、第二次世界大戦中1943年から大戦後46年にかけてのアヘン問題に関する資料を収集した。この時期のアヘン問題は、二つの理由から興味深い。第一に、国際連盟の社会人道面での活動は1945年、連合国(United Nations)によって国際連合(United Nations)が設立されると、国連の経済社会理事会に引き引き継がれた。国連においても中心的役割を果たそうとするイギリスは、東南アジアのイギリス領におけるアヘン政策を国際社会に向けて提示できるものに改善する必要に迫られることとなった。第二に、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国が植民地を保有し、アヘン問題も継続して存在していた東南アジアは第二次世界大戦中日本軍の占領下におかれた。そのためすでに43年以降、イギリスは、日本軍から東南アジアの植民地を「解放」した後のアヘンに関しての方針を策定するようアメリカ合衆国から強い圧力を受けていた。この研究の意義は、二つの帝国が重なり合い、国連が設立される時期において、アヘン問題が政治的な判断に基づいて処理されたことを明らかにすることにある。
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