本年度は、平成25年3月に収集した資料を整理し、まず、11月の史学会大会シンポジウムで「国際関係の中のイギリス帝国と東アジアの境界領域」と題して報告を行った。これに基づき、2本の論文を執筆し、1本は東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻の紀要『国際社会科学』に近日中に掲載される予定である。もう1本は現在投稿中である。 『国際社会科学』掲載予定の論文は、国際連盟による対中国技術協力が1939年にはどのような展開を見せたかを取り扱う。すでに日中戦争が勃発していたこの時期の協力は伝染病対策を主としていた。活動場所も戦争の状況により、次第に中国西南部に移動していった。イギリス人の中では中心となって活動したロバートソンは、ビルマロード沿線でのペスト、マラリアなどの伝染病対策の必要を熱心にうったえていた。 本科学研究費の補助を受けて行った研究により、いくつかの論文を執筆することができたので、将来的にはそれらをもとに「国際連盟の対中国技術協力」あるいは「国際連盟と東アジア」といった内容の書物にまとめたいと考えている。また、ビルマロードでの伝染病対策も、第二次世界大戦期にまでつながり得る興味深い問題である。したがって、平成26年3月には、前者に関しては一書にまとめるため補完的資料、後者に関しては今後発展させていくための資料を収集すべくイギリスなどに赴いた。イギリスでは主として公文書館、ロンドン大学政経学院図書館で資料を収集した。
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