研究課題
従来、韓国の北方外交は、1980年代に入って、全斗煥政権、盧泰愚政権によって主導されたというのが通説であった。しかし、1970年代における韓国外交文書に関する綿密な調査を土台として、1970年代における韓国の対共産圏外交・非同盟外交に焦点を当て、特に、南北朝鮮が、冷戦体制による従来の制約から部分的に解き放たれた中、自らの修交国を増やしながら相手国の修交国数の増加を可能な限り抑制するという意味での、外交競争を激烈に展開する中、それまで北朝鮮優位の状況にあった非同盟諸国との外交関係の拡大を指向するとともに、必ずしも結果的には可視的な成果を上げなかったが、中ソ両国や東欧諸国との関係改善の試みを追求したことを明らかにした。可視的な成果が上がらなかったことは確かだが、それ以後の成果、外交における南北逆転現象の原因となるような模索を、韓国朴正煕政権が追求したことは、本研究の新たな知見であると言える。さらに、韓国の同盟外交に関しては、特に対日米外交に焦点を当て、米国のさらなる対韓防衛関与の継続を繋ぎ止めるとともに、冷戦認識に関する日韓の乖離を極力埋めることで、日韓が協力して米国の関与を繋ぎ止めるとともに、日本が韓国の安全保障のために従来以上に積極的に経済協力を進めるという構図が定着していったことを明らかにした。そうした1970年代、米中和解、日中国交正常化という新たな条件下における日韓関係が、1960年代の日韓関係と比較して、どのような点で連続しており、どのような点で変容したのかも合わせて明らかにすることで、よりダイナミックな日韓関係史解釈を提示することが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
朴正煕政権期における韓国外交に関しては、当初の仮説の実証が、外交文書という一次史料に基づいて順調に進められた。特に、対共産圏外交と非同盟外交という二つの視点から、先行研究ではほとんど言及されていない朴正煕政権期の外交像について新たな知見を提供することができた。ただ、全斗煥政権期1980年代に関しては、韓国外交文書公開が3月末にずれ込んだこともあり、必ずしも十分に取り組むことはできなかった。
1981年までの韓国外交文書が公開され、その収集作業も一応終えることができたので、1980年代、ソ連のアフガニスタン侵攻に起因した新冷戦状況において、一方で、1970年代以来追求してきた対共産圏外交をどのように調整しながら推進したのかを明らかにすることを試みる。他方で、同盟外交に関しては、新たに登場したレーガン政権との間で、従来、葛藤が目立った米韓関係がどのように修復され、それが全斗煥政権の政策にどのような制約を加えたのかを明らかにする。また、中曽根政権との間にも安保経済協力を進めるための前提条件をどのように準備したのかにも注目する。最後に、韓国の経済力を背景とした経済援助を通した非同盟外交に関しても、1970年代との連続性に注目して調査を続ける。
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現代韓国朝鮮研究:特集韓国外交研究の新地平
巻: 11号 ページ: 4-16
Reassessing the Park Chung Hee Era, 1961-1979 : Development, Political Thought, Democracy, and Cultural Influence
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〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓(朴正煕時代韓日関係の再照明)(〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓(国民大学校日本学研究所)編)
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〓〓〓〓〓(統一と平和)(〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓(ソウル大学統一平和研究院))
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http://tongil.snu.ac.kr/pdf/110929/03.pdf
岩波講座東アジア近現代通史8ベトナム戦争の時代1960~1975年(中野聡編)
ページ: 260-281
歴史としての日韓国交正常化I:東アジア冷戦編(木宮正史、李鍾元・木宮正史・浅野豊美編)
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