平成22年度は、本研究のための調査の一環としてNPT運用検討会議に出席し、会議に出席した各国交渉担当者や来場していた研究者等との意見交換を実施したほか、会議資料の収集を行った。2010年のNPT運用検討会議においては、本研究のテーマである、原子力の平和利用を事実上制限することにつながる、不拡散上の措置をめぐる議論が展開され、ある意味では、NPT運用検討プロセスにおいてその比重が高まった。同時にレジームに内在的に存在しているこの平和利用の「奪い得ない権利」という国際社会の原理的な規範である国家主権に近い規範と、NPTという条約が実現すべき「核不拡散」という規範の間の対立性が顕在化した。 その観点から本研究を見ると、その妥当性および重要性は高いということができよう。今後このような二つの価値規範の相克は当面継続されるであろうと予想され、論点を整理し議論を深めていくことは学問上の価値だけでなく政策上も意義深いと言える。 その中で、研究代表者は、NPT運用検討会議の報告を含め、いくつかの論文を学術誌等に発表し、また、これまで蓄積されてきた従来の研究成果と合わせて、本研究の成果の一部を反映した単著の出版を準備している。 しかしながら、現在のところ研究段階はNPT運用検討会議においた事象の表層的整理にとどまっており、今後はこのような事実関係を元に、より理論面において議論を深め、議論を整理していく必要がある。
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