研究課題/領域番号 |
22530152
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
秋山 信将 一橋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (50305794)
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キーワード | 国際レジーム / 規範 / 核不拡散 / 原子力 / NPT |
研究概要 |
平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は、研究対象である原子力の平和利用のあり方に対しても非常に大きな影響を及ぼした。それは、NPT第4条に規定された「平和的利用の『奪い得ない権利』」という規範の位置づけにも大きな影響を与えるものであった。すなわち、『奪い得ない権利』として極めて高位の原則として位置づけられてきた平和的利用に対して、不拡散およびそれと合わせた原子力安全や核セキュリティが、国際社会の関心としてより高い優先順位づけがなされるようになってきたことである。このような対立規範の関係性の変化について、23年度は研究を行った。 これらの国際情勢の変化を踏まえ、核不拡散の国際政治上の意味付けについては、既存の研究成果も加えたうえで十分な調査・分析が得られたために、いったん研究を取りまとめることとし、平成24年3月に、本研究の調査の一部として、単著『核不拡散をめぐる国際政治』を出版した。 また、平成23年度は、NPTサイクルの狭間にあたるために、NPT運用検討会議を中心とする平成22年度の調査とは異なり、主としてアメリカの政策動向、とりわけ日米の原子力関係の歴史的な経緯について資料調査やインタビューを実施した。これは、レジーム内における日米という二国間関係に着目しレジームのあり様が実際の国家間関係にどのように影響を及ぼすのか、両国の間で、平和利用の奪い得ない権利と核不拡散という潜在的に対立的な価値の相克がどのような形で発現したのかを明らかにする事例研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既存の発表論文に一部依拠しているとはいえ、それらの論考を総合し、議論を再構成したうえで、2年目にあたる平成23年度の最後に単著の形で研究成果を発表できたため、研究が当初の計画以上に順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
日米関係については、福島の対応をめぐる経緯を調べたものとして、福島原発事故独立検証委員会の調査報告書の中で第12章「原発事故対応をめぐる日米関係」という論文で発表をしているが、それに加え、現在原子力の平和利用をめぐる日米関係についての単著を準備中である。これは、奪い得ない権利として存在する平和利用という規範と不拡散という規範の相克が、レジームの中の二国間関係の中でどのようにはたらいたのかを歴史的に分析する著作となる予定である。 これは、当初の計画にはなかった成果発表の方法であるが、すでに『核不拡散をめぐる国際政治』の中でレジームの動態に関する分析を行ったこともあり、二国間関係についても踏み込んだ分析を実施したいためである。
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