研究課題/領域番号 |
22530156
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
黒岩 幸子 岩手県立大学, 共通教育センター, 准教授 (80305317)
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キーワード | 北方領土問題 / ビザなし交流 / 南クリル / 南千島 |
研究概要 |
本年度は、冷戦期のソ連の領土問題への対応、その後の変化を中心に研究をすすめた。7月に北方四島ビザなし交流に参加する機会を得て、近年の北方領土のソビエト化の実態を直接知ることができたことは本研究にとって役立った。ソ連占領後の千島史は来年度の研究課題だが、その前に南千島の現状を把握できた。 1960年代に日ソ領土問題は冷戦構造の中で膠着する。日本では国際法、国際政治、歴史分野の専門家たちが、領土問題の解決を探りつつ研究を行った。ソ連の公式見解は、「日ソの領土問題は解決済みで日ソ間に領土問題は存在しない」というもので、日本のような検証は進まず、日本の主張を否定し、ソ連の立場を擁護する言説のみが見られた。1980年代後半のソ連でゴルバチョフにより改革、新思考外交が始まると、情報公開の効果もあり、日ソ領土問題の解決に向けた多様な提言がソ連の言論界に出てくる。それらは当時の日本の言論界よりも柔軟で多様性を持っていた。日本は冷戦期に「四島即時-括返還」という強硬姿勢を北方領土返還運動とともに国内に定着させたため、領土問題解決に当たるアクターたちも世論もソ連以上に硬直していた。1980年代後半のソ連の言論界では、冷戦期同様に日本との妥協を否定するものも多かったが、その他に、二島返還、経済支援との引き換えの妥協、日本に四島を売却、共同統治、国連信託統治など様々な案が出された。その後日ソ・日ロ交渉は、ほぼ25年間続いたが、日本側の強硬な四島-括返還の姿勢、日本国内の二島先行返還派と四島-括派の争いなどで、結局妥結に至らなかった。 2000年代末から、ロシアは北方四島の開発に力を入れ始め、択捉、国後、色丹のインフラ整備は過去3年で急速に進んでいる。かって日ロ領土問題の解決に意欲を見せたプーチンが大統領職に戻った現在、過去25年のソ連・ロシアの領土に関する言説の整理は今後の交渉にとっても意味がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソ連・ロシアの地政学復権の系譜をたどった前年度の研究に続き、本年度は、予定通りに冷戦期から現在に至る、ソ連側の北方領土問題に関する具体的な言説の変化をたどることができた。また国後島・択捉島にビザなし交流で上陸する機会を得て、二島の現況を記録することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ソ連・ロシア実効支配下の千島列島についての研究を進める。今後北方四島を訪問できる可能性は定かではないが、サハリン州での調査は可能である。また近年は、ロシアで18-19世紀に存在した露米会社に関する研究が進んでおり、公文書館の資料が公刊されている。日ロ国境画定以前にさかのぼって千島吏をたどることも検討する。1945年以降のクリルについては、ロシアでソ連時代には見られなかった研究が進んでおり、参考にできる。
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