研究課題/領域番号 |
22530156
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
黒岩 幸子 岩手県立大学, 共通教育センター, 准教授 (80305317)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 北方領土問題 / クリル列島 |
研究概要 |
本年度は、ロシアがクリル列島に初めて進出した18世紀初めから現在に至るまでのロシア帝国・ソ連・ロシア連邦によるクリル統治を時系列で眺めることに力を入れた。 日ロ国境画定以前のクリル列島には、19世紀初頭までにに日ロの自然の勢力範囲が定着し、それはロシアはウルップ島以北、日本は択捉島以南だった。この時代のロシアのクリル進出は、ロシアの国策会社である露米会社によるものだ。露米会社に関する当時の膨大な文書は、近年ロシアでまとめられて出版されたので、これを利用してクリルの状況を知ることができた。ソ連時代のクリルについては、ロシア側の歴史書に頼る部分が大きい。過去20年のクリルについては、ビザなし渡航など日本との交流が若干可能になったほか、報道陣その他の日本人が渡航して紀行文を書いているものからたどることができる。 最近のロシアのクリルに対する地政学的アプローチを知る手がかりとして、ロシア人研究者で評論活動の活発なドゥーギンおよびトレーニンのそれぞれの四島返還論を分析した。 8月に境界地域研究ネットワークJAPANが実施した稚内・サハリンセミナーに参加し、ユジノサハリンスクの領土に対する関心等について現地での情報収集を行った。また10月に岩手県立大学で日ロ歴史家会議を開催し、日ロ間の歴史的な問題の各論が出され、領土に関する討論が参考となった。 安倍・プーチン会談の実現や、ゴルバチョフ時代の内部文書のリークなどで、国家間レベルでの北方領土問題の新たな展開が見られ、現況のフォローも一つの研究の柱とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去300年のロシアによるクリル列島に対するアプローチをたどることが出来た。クリル列島に視座をおいて北方領土問題を見直すためにユーラシア・ブックレット『千島列島と日ロ国境』(東洋書店、2013年10月発行予定)を執筆した。 「稚内・サハリンセミナー」による境界研究、「日ロ歴史家会議」による近現代の日露関係史にかかわる知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の最終年度として、まとめの執筆にとりかかる。過去3年の成果をもとに、ロシア地政学の流れ、クリル列島に視点を置いた日ロ国境問題の再検証、ロシアの近年のクリル統治の傾向を総括し、北方領土問題の解決に向け、今後日ロがどのように動くか、また動くべきかを論じる。
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