当該年度には、まずは気候変動に関して、既存の文献等を中心に京都議定書交渉およびポスト京都議定書交渉のプロセスを比較しつつ、グローバルなレベルでの気候レジームの形成と気候欧州連合(EU)の排出量取引制度(EUETS)との相互連関を分析するとともに、欧州連合の労働政策およびCSR(企業の社会的責任)政策に関して、パブリック・ガバナンスとプライベート・ガバナンスの相互連関という視点から先行文献の調査を実施した。 その上で、平成22年11月21日から11月30日にかけてベルギーのブリュッセルに赴き予備的な聞取り調査を行なった。具体的には、気候変動に関しては、欧州化学連盟のボチェック氏、欧州経団連のフランツ氏、欧州委員会気候変動総局のポラード女史及び欧州電気事業者連盟のスコウクロフト氏に、そして労働政策及びCSR政策に関しては、欧州委員会雇用総局のバード女史に対してそれぞれヒアリングを行なった。 上記の調査を踏まえ、研究成果の一部を「越境する問題群とグローバル・ガバナンスの多様化」と題する論文に纏めて、それを『政治の発見(8)越える-境界なき政治の予兆』の第5章として挙表するとともに、平成23年3月16日から3月20日にカナダのモントリオールで開催されたISA(国際政治学会)の年次大会で"The Failure of a Great Experiment in Market-Based public Governance for Climate Change : The Norm of Domestic Actions and the Social Construction of Adjustment Costs"と題する研究論文として発表した。
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