本研究はこれまでのASEANの一連の会議外交をめぐる多国間協力の研究のなかで解明されてこなかったトラック2とトラック3市民社会アクターによる政治、安全保障、社会・文化の地域の共同体構築に寄与するアイディア、人権規範の伝播の経路を探求するものである。また同時にこれらの規範的アイディアがトラック1の政府間機構に受容しづらく、それゆえにトラック2とトラック3市民社会アクターがいかに規範の伝播に向けて協働メカニズムに関与しているかを考察するものである。 本年度はトラック2とトラック3チャンネルが相互に関与し、トラック1アクターも参加し、実働を終えたASEAN市民会議(ASEAN People's Assembly)の調査のためトラック2及びトラック3のアドボカシーグループの主要メンバーから聞き取り調査をジャカルタ、マニラ、シンガポール、クアラルンプールで行った。また研究協力者より同会議の一次資料を収集し精査することと並行して国内でASEANの地域主義のなかにおける市民社会論の展開について文献を中心に調査を行った。 日本国際政治学会2010年度研究大会のトランスナショナル分科会[非国家主体によるセキュリティー・ガバナンスの可能性-アジアとアフリカとの視点から]でこうした研究成果の一部を口頭報告した。
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