本申請の研究は、国際通貨基金(IMF)が各国の銀行民営化・銀行規制強化など種々の金融政策改革において果たす役割を明らかにしようとするものである。IMFのコンディショナリティ・プログラムの影響を中心に、その国への海外からの経済援助やその国の政治制度がそれぞれどのような相互の関係を持って金融政策に影響を与えるかに着目し、こうした政治的要因が銀行民営化・銀行への監督権限強化などの金融政策にどのように影響を与えるかを、グローバルデータを用いた計量分析および事例研究を通じて明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、昨年度作成したグローバルデータベースを改善するために、米国に関する変数、貿易データ、および銀行の貸付データなどのコード化につとめ、引き続き計量分析を行った。銀行改革分野および資本収支の自由化など6分野の金融改革に分析を集中して行い、IMFとのプログラムに過去二年間以内に合意に達成した国で、より米国から海外援助を受けている国ほど、金融自由化の方向性での金融改革を行う一方で、より慎重な金融規制を行う等の規制強化の方向性の金融改革に関しては、より行われない、という知見が得られ、これらを米国の学会にて発表した。そこで得られた助言をもとに、査読付き論文に投稿を目指し改稿を行った。8月には米国ワシントンDCのIMFを訪問し、IMFのスタッフやIMF独立評価機関スタッフへのインタビュー調査を行った。これらの知見を、インドネシアの金融改革について書いた事例研究に反映させた。事例研究に関しては、インドネシアとタイの二カ国の金融改革の比較についての質的調査に基づいた論文を完成させる予定であったが、雑誌の規定の次数を大幅に超過するため、インドネシア一国の事例研究をまず完成させ査読付きの海外雑誌に投稿した。
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