研究課題/領域番号 |
22530168
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研究機関 | 国際大学 |
研究代表者 |
信田 智人 国際大学, 国際大学研究所, 教授 (80278043)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 政策決定 / 日本政治 / 政権交代 / 日本外交 / 日米比較 |
研究概要 |
平成24年度には、民主党政権におけるいくつかの事例研究をまとめ論文の形で発表した。まず、Asian Survey誌Sept/Oct 2012に、“Japan’s Failed Experiment: The DPJ and Institutional Change for Political Leadership,”と題した論文で、民主党政権下の制度変化を分析した。ここでは政治主導のために事務次官会議の廃止や三役会議の導入、政策決定の一元化などを行ったが、官僚を排除したため、経験不足の民主党政権の政策決定者が、多くの問題に対応できなくなったり、下手な対応を行った様子を分析した。 2013年4月には『政治主導VS官僚支配-自民政権、民主政権、政官20年闘争の内幕』という本を朝日選書から出版し、より詳しく外交政策の事例を扱った。ここで主に扱ったのは、鳩山政権における普天間飛行場移転問題と、菅・野田政権における尖閣問題への対応だった。 鳩山政権では現行の移転計画を薦める外務・防衛官僚の声を無視し、独自の計画を見つけようとして頓挫した鳩山首相の様子を分析した。菅内閣では鳩山の官僚排除路線を変更しようとしたが、尖閣問題において官僚の有効な活用ができず、非常にぎこちない対応になってしまった。これに対照的なのは野田政権で、官僚の専門知識をフルに活用し、香港の活動家の尖閣上陸に対応した。このように民主党政権下での三つの内閣の異なった対応について分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
民主党政権における政権交代後の外交政策決定過程については、すでに英語の論文や日本語の本によって、分析した結果を報告することができた。さらにこの夏に出版される英語の本の中で、安倍政権になってからのTPP問題や、現在までの普天間問題について論じている。政権交代でさまざまな事象が怒っているのにもかかわらず、なんとか現状分析を行い、タイムリーな形で研究を発表できたと自負している。 さらに秋には、日本国際政治学会で、「日中韓三ヵ国における国内政治と対外関係のリンケージ」という部会で、尖閣問題における日本の対応に関する論文を発表する予定である。とくに尖閣国有化という課題で、野田政権による対応がいかに国内の政治日程に強く影響されたかを分析する予定である。 このように日本の政権交代に関する研究は、予想以上に進んでいるが、最初の課題とした日米の比較分析が追い付いていない。安倍政権になっても、さまざまな外交問題が山積しているため、そちらの研究に追われて、日米の比較分析が遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
ポスト民主党政権下の外交政策のレビューと、民主党政権や旧自民党政権、小泉政権との比較研究を行う。それによって、政治主導が機能するためには、どのような条件が必要なのかを抽出することによって、体系的な理論化を試みたい。制度変更がどのような影響を生んだのか、制度を活用にするためには何が必要か、という分析は実際の政治の現場に必要な研究であると考える。 具体的には、橋本政権下における行政改革の一環として、行われた内閣機能の強化策によって、首相と内閣官房の権限が強化された。それを利用して、政治主導の外交政策を展開したのが小泉首相であった。ところが、小泉首相以降の自民党政権においては、それらの制度変更を活用した形跡が見られない。民主党政権においては、鳩山首相が政務三役会議の設置や事務次官会議の廃止など、数々の制度変更を行った。しかし、強い政治主導をもたらさず、官僚機構の弱体化を弱めるだけであった。 ここから考えられるのは、外交政策における強い政治主導は、官僚機構を動かし有効に活用する必要があるという点である。官僚機構を有効に活用し、政治主導を発揮できる条件とは何か。これについては、小泉政権しか成功例がないので、一般化することができなかった。安倍政権下の成功事例が出てくれば、それらを研究することによって見出して行きたい。
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