2011年度の研究活動のハイライトは、8月末から9月初めにかけて行った、米国ナショナル・アーカイブIIにおける資料調査であった。前年度にも調査を行っているが、そこで時間的制約のために、完全に写真に収めることができなかった、日本共産党書記長徳田球一に関する米軍資料(RG319)について相当量の写真を得ることができた。それに加えて、ワシントンの米陸軍省のG-2が整理していた、日本共産党の組織とその活動に関するファイルを発見し、必要箇所を写真に収めることに成功した。最も興味深いのは、日本共産党幹部の自宅周辺についての詳細な写真や、当該関係者の普通の1日の活動パターン、さらに来客者についての情報等が含まれていることである。また、吉田茂が政権を離れている時期にも、GHQは彼の活動を克明に追っており、その言動を把握していたことも判明した。ただし彼が政権を握っていた時も、同様の活動を行っていたことが想像されるが、それについてはさらに高い機密性があるためか、発見できなかった。また不二出版が出版した、いわゆる光永ファイルを購入し、米国で発見した資料と、日本の公安部門の資料と照らし合わせている。まだまだ不明な部分が多く、これまで以上の細やかな整理と分析が必要であると思われるとともに、不明部分を解明すべく、新たな資料調査旅行を行う必要があると思われる。
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