世界各国で長期不況が続いているが、これまでのマクロ経済学では短期不況しか説明できなかった。本研究では、はじめに失業が長期的に続く状態で、失業率に応じて賃金が徐々に調整されるメカニズムを公正賃金の概念を使って提示した。つぎに、自分の保有する金融資産の社会的な位置(地位選好)を気にする家計の行動を定式化した。この二つの前提から、生産力の低い状態では完全雇用が実現されるが、生産力が高まると長期的な需要不足に陥って不況が続くことが理論的に示された。さらに、短期的な不況と長期的な不況では、金融政策や財政政策の効果に大きな違いが生まれることがわかった。
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