研究概要 |
応用一般均衡論の特徴は経済学の基本的分析手段である比較静学を「統計処理によりパラメータを一点に特定化した後でスカーフ・アルゴリズムにより均衡解を計算」して行うことである.私はむしろそのパラメータをアトランダムに数多く選んで古典的なニュートン法により一般均衡解を計算し,その均衡解の性質を分析することで比較静学を行ってきた.この方法で私は国際経済学,資源・環境問題,防衛・安全保障などのテーマを選んで比較静学を行ってきたが,本研究の目的は,これらの研究成果を更に発展させ,新たに国際貿易と所得分配というテーマへと拡張することである.本年度は,その中で防衛・安全保障のテーマについて「国家形成」と「防衛統合」の違いを公共財(防衛)を含む(2地域)一般均衡モデルにより吟味した.「国家形成」は「防衛統合」と「経済統合」からなる.ここでまず2地域が「防衛統合」を行い次に「経済統合」により「国家形成」を実現する場合と2地域がまず「経済統合」を行い次に「防衛統合」により「国家形成」を実現する場合が考えられるが前者のほうが無理なく実現できる(前者ではそれぞれの移行はパレート改善となるが後者では防衛統合はパレート改善であるが次の経済統合はパレート改善とはならない)ことを示し,現在のヨーロッパにおける方法が経済学的観点から優れていることをヨーロッパで開かれた学会で発表した.パラメータを色々変更しても結論の頑丈姓が保障された.この学会で一定の評価を受け,次回からの学会の公募テーマの一つに「一般均衡分析による安全保障分析」が追加された.また,この学会で安全保障と国際貿易に関する論文も発表されたので意見を交換し,有益な情報を収集できた.
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