研究概要 |
自然環境にも配慮した「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility, CSR)への関心が、現代社会において高まっている。しかしながら、経済学の理論においては株主のために利潤を最大化することが企業の目的であるという考え方が支配的である。ミルトン・フリードマンによれば、利潤を最大化していない企業は社会的責任を果たしていないことになる。倫理的な要素が企業にとって費用となる限り、利潤最大化と相反するようなCSR活動を行う企業は非効率的な存在となり、市場経済において淘汰されてしまう。 本研究では、経営者のCSR活動にたいする心理的態度と、ステークホルダーが抱く企業のCSR活動への心理的評価との相補的な関係を明示的に理論化することにより、市場圧力だけにとらわれずに、倫理的な次元をともなった企業理論の新たな枠組みを提示する。その枠組みにおいて、利潤最大化行動と倫理的行動とのトレードオフに縛られない新たな企業理論の構築を目指した。具体的には、次の二つの研究目的を掲げた。(1) 経営者とステークホルダーとの贈与交換ゲームを考え、正の互恵性が両者の間で創発する非市場型メカニズムを明らかにする。(2) 経営者とステークホルダー両方の利他的行動が持続可能となるための制度的条件を、動学モデルを使って明らかにする。 本研究に関する研究成果の一部は、平成24年度において、Society for the Advancement of Behavioral Economics 2012 コンファレンス (スペイン グラナダ Abades Nevada Palace)で発表された。
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