研究課題/領域番号 |
22530183
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今井 亮一 九州大学, 留学生センター, 准教授 (10298507)
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研究分担者 |
工藤 教孝 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (80334598)
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キーワード | サーチ / マクロ経済学 / 労働 / 貨幣 / 産業組織 |
研究概要 |
本年度は直接経費の総額が70万円と少額であったため、もっぱら研究代表者である今井が責任をもって執行し、研究会幹事であるが遠方からの出席となる工藤が分担者として協力した。 サーチ理論の研究テーマは、多岐にわたるが、だいたい労働市場と貨幣理論とその他、に大別される。今井はもっぱら「その他」に該当する産業組織関連の研究を行った。具体的には、中古市場における製品リサイクルとそのマクロ的影響のモデル化である。中古品というと、書籍や音楽CDのような小さなものから住宅や自動車など大きなものまで、市場の幅が広い。例えば、住宅や自動車の買い替えサイクルは、マクロ経済変動の大きな要素であるが、精緻な分析はこれまであまり行われてこなかった。今井のモデル「A Search Model of the Resale Market」「Middlemen and Resale」では、消費者の選好(具体的には生活事情を含む)が変化することによって、中古品が「創造(create)」される。その結果、新品に対する評価の高い人が中古品の売り手となり、評価の低い人が買手となって、中古品市場が内生的に生成される。中古品市場の生成によって、買手に流動性が供給され、製品サイクルが加速され、景気がよくなる(GDPが増える)。しばしば中古品市場の存在は、新品の供給者の利益を損なうと言われるが、住宅や自動車の場合にはそういうことはない。これは、住宅や自動車のような大きな耐久消費財の保有コストが大きいので、中古市場の整備は買い替えを促進するかである。書籍や音楽CDのように保有コストが小さいものでも、やはり同様のメカニズムは、程度の差はあれ、機能する。 工藤の招待報告論文「Labor Market Rigidities and Industrial Structures in a Global Economy」は、最近注目されている国際貿易理論とサーチ理論の統合の試みの一つである。一般には閉鎖経済から開放経済への移行において自由貿易を選択すれば、自国の経済厚生は改善することが知られている。しかし、摩擦的失業が恒常的に存在するサーチ理論を貿易理論の枠組に組み込むと、興味深い比較静学が得られ、経済厚:生についても、要素賦存度に依存して複雑な結果が得られることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外のコンファレンスで報告し、有益なコメントも得て、論文投稿の準備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
着実なペースで研究会を行い、他の研究者の報告から学び、また自分も報告する。 若手研究者を積極的に招き、サーチ理論研究の裾野を広げる。 元々強力だった海外人脈をさらに強化し、国際的に活躍する日本人・外国人を招いてコンファレンスを行う。
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