研究課題/領域番号 |
22530183
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今井 亮一 九州大学, 留学生センター, 准教授 (10298507)
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研究分担者 |
工藤 教孝 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80334598)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | サーチ / 労働 / マクロ経済学 / 貨幣 |
研究概要 |
本年度は直接経費の総額が70万円と少額であったため、もっぱら研究代表者である今井が責任をもって執行し、研究会幹事であるが遠方からの出席となる工藤が分担者として協力した。 今井の研究「A Search Model of the Resale Market」「Middlemen and Resale」では、消費者の選好(具体的には生活事情を含む)が変化することによって、中古品が「創造(create)」される。その結果、新品に対する評価の高い人が中古品の売り手となり、評価の低い人が買手となって、中古品市場が内生的に生成される。中古品市場の生成によって、買手に流動性が供給され、製品サイクルが加速され、景気がよくなる(GDPが増える)。しばしば中古品市場の存在は、新品の供給者の利益を損なうと言われるが、住宅や自動車の場合にはそういうことはない。これは、住宅や自動車のような大きな耐久消費財の保有コストが大きいので、中古市場の整備は買い替えを促進するかである。書籍や音楽CDのように保有コストが小さいものでも、やはり同様のメカニズムは、程度の差はあれ、機能する。 研究分担者の工藤は財市場における価格設定について研究した。完全競争的な財市場と異なり、摩擦を考慮した財市場では、売り手と買い手は自由に出会えない。サーチ理論における伝統的な扱いは、売り手と買い手の出会いが確率的に発生し、その後ナッシュ交渉という手続きによってお互いの利得を分配するという形で価格が決まる。本研究では、より現実の財市場の手続きに近い価格メカニズムを考慮すべく、売り手が価格を事前に提示するモデルを構築し、分析した。高値で売る利益と、高値によって消費者が購入をためらうというトレードオフを定式化した結果、摩擦的市場における提示価格の構造を詳細に明らかにした。将来的には物価の決まり方について新しい知見が得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、Search Theory Workshopだが、平成24年度も順調に例会をこなした。ベテラン、若手を問わず、活発な議論が行われる場所を提供していると自負している。ただし、今回のプロジェクトは4年計画で最終年度に当たり、2年目以降は補助金額が激減しているので、日本に滞在する外国の研究者を国内出張の形で報告してもらうのもなかなか難しくなっている。とはいえ、元々、このプロジェクトの趣旨は一定のペースで研究会を実施して維持することにあるので、研究上の障害にはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
着実なペースで研究会を行い、他の研究者の報告から学び、また自分も報告する。若手研究者を積極的に招き、サーチ理論研究の裾野を広げる。元々強力だった海外人脈をさらに強化し、国際的に活躍する日本人・外国人を招いてコンファレンスを行う。 平成25年度は、2つの大きな研究イベントを計画している。一つは5月18日(土)19日(日)に開催されるSearch & Matching Theory Conference(東京大学)である。これはSTWの科学研究費補助金で実施するものではないが、テーマは強く関連し、STWの幹事および関連研究者が出席する。 もう一つは8月上旬に札幌で開催されるSWET (Summer Workshop on Economic Theory)にサーチ理論の研究日が設けられたことである。具体的な内容については現在企画中である。
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