研究代表者・分担者の研究成果について報告する。連携研究者については省略。 研究代表者の今井は、転売と中間取引の機能について研究を続けている。現代の市場経済では財の生産者でも消費者でもない人が取引を仲介することが多い。しかも、多くの場合、取引仲介者が生み出す付加価値は生産者が生み出す付加価値よりはるかに大きい。中間取引者(middlemen)の機能は取引摩擦を軽減することにあるが、中間取引者を介した取引が生産者と消費者の直接取引より多くの取引機会を見出せない場合は、外部不経済を発生させ市場の効率性を下げることになる。中古市場において、売り手が直接買い手に出会うのには時間がかかるが、中間取引者を利用すればすぐに売ることができる。また、その結果複数の在庫を入手した中間取引者が開いた店に行けば、売り切れの心配なく買い手は商品を入手することができる。今井は、このような設定において中間的取引者の存在が経済厚生を改善することを示した。 研究分担者の工藤は摩擦的な財市場における価格設定について研究した。摩擦のない財市場と異なり、摩擦を考慮した財市場では売り手と買い手は瞬時には出会えない。サーチ理論における伝統的な扱いは、売り手と買い手の出会いが確率的に発生し、その後ナッシュ交渉という手続きによってお互いの利得を分配するという形で価格が決まる。本研究では、売り手が価格を事前に提示して消費者が買うかどうかを決めるという現実的なモデルを構築し、分析した。企業を多くの売り手の集合体とみなすことで「企業規模」という概念をモデルに登場させ、企業規模と価格支配力の関係を明らかにした。伝統的な価格競争理論と異なり、規模の大きな企業がより高い価格を付けることを明らかにした。規模の大きな企業にはより多くの売り手がいるため、消費者は大企業に頻繁に遭遇することになり、その事実が企業に価格支配力を与えるのである。
|