本研究の目的は、市場経済において各経済主体が経済取引や情報伝達等の関係で結ばれ内生的ネットワークを形成する可能性がある場合に、経済主体の戦略的行動と協調的行動の相互作用が経済の制度や組織にどのようなインプリケーションをもたらすのかをゲーム理論的に分析することにある。特に、個々の経済主体が相互に異なる情報あるいは異なる選好や資源を持って行動するような状況における戦略的行動と協調的行動の相互作用の結果として、経済主体全体の取引や情報に関して、どのような構造が内生的に生まれるかを分析することを目標としている。 研究計画の初年度は、二つのプロジェクトを実施した。一つは、現代経済理論の基本的枠組みにおける経済の数量および変量に関する認識およびその代表的表現形式である需要概念を中心に経済分析の歴史における経済数量や変量に対する認識の現代経済理論からの解釈を「Debreuコンジェクチャー」の視点から考察した分析結果を和文および英文で公表した。 今一つは、論文"Incentive Efficient Settlement Mechanism"においてGreen教授と共同で取り組んだ経済主体間の資金決済のネットワークを考慮した基礎モデルを、一般的な経済取引のネットワークのモデルへと発展させることから始め、各経済取引主体の競争相手を導入することによって明示的な競争的耳引ネットワーク形成のモデルを構築したことである。そしてこの基本的な経済取引のネットワークのモデルを用いて、取引ネットワーク上の競争の形態がどのような取引結果を生み出すかについて共同研究を進めているところである。これまでに得られた中間的な分析結果を、現在「ヴィクセル型取引ネットワークにおけるエッジワース競争の分析」としてディスカッション・ペーパーとしてまとめている最中であり、今秋の学会で発表の予定である。
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