研究課題
本研究の目的は、市場経済において各経済主体が経済取引や情報伝達等の関係で結ばれ、内生的ネットワークを形成する場合に、経済主体の戦略的行動と協調的行動の相互作用が経済の制度や組織にどのようなインプリケーションをもたらすのかをゲーム理論的に分析することにある。特に、個々の経済主体が相互に異なる情報、あるいは異なる選好や資源を持って行動するような状況における戦略的行動と協調的行動の相互作用の結果として、経済主体全体の取引や情報に関して、どのような構造が内生的に生まれるかを分析することを目標としている。研究初年度における需要概念に関する「Debreuコンジェクチャー」の視点からの分析結果の和文および英文での公表に続き、研究二年度は、論文"Incentive Efficient Settlement Mechanism"においてGreen教授と共同で取り組んだ経済主体間の資金決済のネットワークを考慮した基礎モデルを、一般的な経済取引のネットワークのモデルと捉え、経済取引主体の競争相手を導入することによって明示的な競争的取引ネットワーク形成のモデルを構築した上で、この基本的な経済取引のネットワークのモデルを用いて、取引ネットワーク上の競争の形態がどのような取引結果を生み出すかについて、連携研究者である星野良明准教授(香川大学・経済学部)および石川竜一郎講師(筑波大学・システム情報工学研究科)との共同研究を進展させた。これまでに得られた中間的な分析結果を、「ヴィクセル型取引ネットワークにおけるエッジワース競争の分析」として日本経済学会および他大学(早稲田大学、京都大学、一橋大学)の研究ワークショップ等で発表し、ディスカッション・ペーパーとしてまとめた。現在その英文化の作業と進めている。
2: おおむね順調に進展している
基本的モデルの構築から開始した明示的な競争的取引ネットワーク形成のモデルを用いたヴィクセル型取引ネットワークにおけるエッジワース競争の分析がおおむね順調に進展し、日本の学会あるいは他大学における研究成果の発表も実施し、英文による論文の発表の準備も進展中である。
競争的取引ネットワーク形成の基本的モデルを用いたヴィクセル型取引ネットワークにおけるエッジワース競争の分析は、基本モデルの分析が終了し、ついで競争的取引相手の数が順次増加して行く場合の「売り手」と「買い手」間のレントに関する分析を現在進めている。本年の9月末を目処に、それまでにまとめられた研究結果を国内の学術専門誌に公表する手続きを進め、ついで、今年度の研究成果を英文でまとめ国際学術専門誌に発表する準備に入る予定である。
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Discussion Paper Series No.21, Graduate School of Economics, Meisei University
ページ: 1-42
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