研究概要 |
本研究計画の主な対象は[電波再配分メカニズム(EMM)」であるが、本年度においては日本において(EMMの前提条件である)電波オークションの導入方針が確定し、本研究代表者は総務省「周波数オークションに関する懇談会」のメンバーとしてオークション制度骨子の策定に参加した。このため本年度においては、本研究の重点を電波オークション導入に際して生ずる諸課題の分析・検討に置き、下記のように論文作成、学会発表等をおこなった。(1)電波オークション導入時に検討すべき多数の課題について、諸外国の経験を参考にした上でこれを列挙・概観し、それぞれについて「望ましい選択肢」を指定してその理由を述べた(鬼木[231-(2)])。(2)オークション導入時においては、導入前に(無料に近い条件で)電波割当を受けている既存事業者と、導入後に(市場価格を支払って)電波割当を受ける新規事業者との間に大きな不公平を生じ、産業成長の要件である公平・オープン競争環境が成立しない。この問題についてミクロ経済原理を適用した「イコール・フッティング方策」を提案し、その効果を説明した(同[231-(5),233])。(3)周波数再編成を実施する際の理論的根拠として、利用中の周波数帯にかかる(最低)供給価格、(最高)需要価格等の概念を導入し、再編成実施のための厚生条件と実現可能性条件を示した(同[234])。(4)プレミアム周波数帯(700/900MHz帯)について、「無線ブロードバンド」の成長を加速し、かつ国民共有資産である電波収入の正当な分配を実現するため、同周波数帯にオークションを適用する必要性を述べた(同[232,233,235])。(5)オークション導入のための電波法改正案(2012年3月)の内容を解説し、改良点を指摘してその理由を述べた(同[236,237])。
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