研究課題/領域番号 |
22530192
|
研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
田村 伊知朗 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10222126)
|
キーワード | ヘーゲル左派 / ブルーノ・バウアー / 純粋批判 / 三月前期 / ドイツ / テオドール・オーピッツ / 後期近代 / ヘルマン・イェリネク |
研究概要 |
本研究は、ブルーノ・バウアーの純粋批判の哲学における大衆批判の意義を歴史的位相と後期近代的位相において定位することを目的にしている。この哲学をドイツ三月前期という歴史的状況において考察すると同時に、その意義を後期近代の大衆理論との連関において位置づけようとする。 本年度は、そのなかでもヘルマン・イェリネク(Hermann Jellinek,1823-1848年)の政治思想を討究した。純粋批判の同時代的受容者である彼の政治思想を討究することによって、三月前期の社会思想の一端を解明し、その結果、純粋批判の社会的実践力に関する研究に寄与することができた。第一に、周辺ヘーゲル左派としての彼の政治思想を解明することによって、ヘーゲル左派の思想史的意義と限界を明らかにした。第二に、ドイツ三月前期における彼の思想に関する本格的論文は、本邦において初めてである。このように、ドイツにおいても伝記を除けば、思想的、哲学的研究はまれであり、その研究史的価値も低くはないであろう。 また、イェリネクだけではなく、テオドール・オーピッツ(Theodor Opitz 1820-1896年)の思想研究の土台を構築した。とりわけ、リーシュタール詩人=都市博物館(スイス連邦共和国・バーゼル州)に所蔵されているブルーノ・バウアーの手紙等を閲覧した。この閲覧によって、後期ブルーノ・バウアーと後期オーピッツとの思想的交流の一端が明らかになった。それは、バウアーとニーチェとの思想的関連性を問題にする際、重要な資料になろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブルーノ・バウアーの純粋批判の同時代的解釈者であるヘルマン・イェリネクの思想が解明された。純粋批判と社会的実践力の関係の一端が明らかになった。この研究成果により、ヘーゲル左派の周辺思想家の研究がより進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、ヘルマン・イェリネクだけではなく、テオドール・オーピッツの思想を解明する。毎年、ドイツ三月前期における未知のヘーゲル左派の思想が解明されることになるであろう。
|