本研究の目的は、スラッファ編『リカードウ全集』刊行(1951年-1973年)以来の日本のリカード研究と欧米のリカード研究の状況を比較することを通して、両者間の異同、各々の特色を解明することである。このために平成23年度は、前年度の作業を受けて以下の作業を実施した。 (a)前年度に引き続き、研究課題に関連する資料・文献の調査・収集を実施した。また、リカードウ国際会議(2012年3月17日-18日)、経済学史学会全国大会(2011年11月5日-6日)、マルサス学会(2011年7月9日-10日)他の機会を利用して、内外の研究者からの情報収集に努めた。 (b)前年度に引き続き、最近20年間の研究史に焦点を絞り、日本のリカード研究と欧米のリカード研究に関連する資料・文献の包括的な整理・検討を実施した。そして、欧米のリカード研究史におけるテリー・ピーチのリカード解釈、デ・ヴィーヴォのトレンズ=リカード解釈、森嶋通夫のリカード解釈、ブラウグのリカード解釈とそれらをめぐる交錯した論争を整理・検討し、その意義を明らかにした。特に、日本を代表する理論経済学者であった森嶋通夫の『リカードの経済学』(1989年)については、詳細な検討を加え、日本のリカード研究における独自の貢献として再評価することを主張した。さらに、国内の複数のリカード研究者と「日本のリカードウ研究の新展開」と称する共同研究を立ち上げ、日本のリカード研究の独自の成果と今後のリカード研究の方向性を提示することを目指した。 (c)以上の研究の成果に関する論文を執筆し、『マルサス学会年報』及び『人文社会論叢』に発表するとともに、マルサス学会、リカードウ研究会(2012年3月23日)、経済思想研究会(2011年7月16日)において、口頭発表を実施した。
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