本研究の目的は、スラッファ編『リカードウ全集』刊行(1951年-1973年)以来の日本のリカード研究と欧米のリカード研究の状況を比較することを通して、両者間の異同、各々の特色を解明することである。このために平成24年度は、前年度の作業を受けて以下の作業を行った。 (a) 前年度に引き続き、研究課題に関連する資料・文献の調査・収集を実施した。また、経済学史学会全国大会(2012年5月26日-27日)、マルサス学会(2011年7月7日-8日)リカードウ国際会議(2012年9月3日-4日、2013年3月27日-28日)他の機会を利用して、内外の研究者からの情報収集に努めた。 (b) 前年度に引き続き、最近20年間の研究史に焦点を絞り、日本のリカード研究と欧米のリカード研究に関連する資料・文献の包括的な整理・検討を実施した。そして、前年度からの継続として、日本のリカード研究の独自の成果と今後の方向性について検討を進め、その一定の総括として、経済学史学会大会においてセッションを組織した。また、近年、欧州の代表的なリカード研究者ハインツ・クルツが日本のリカード研究を批判する論文を発表したことを受けて、リカードの労働価値理論の発展過程について再検討しつつ、クルツの主張を検討し、反批判を試みた。さらに、関連する課題として、近年、石井穣が『古典派経済学における資本蓄積と貧困』(2012年)において、、リカード、バートン、マルクスの経済学の再評価を行ったことを受けて、この著書を検討し、日本の最新の研究成果の評価と今後の研究の展望を行った。 (c) 以上の研究の成果に関する論文を執筆し、『マルサス学会年報』と『人文社会論叢』に発表するとともに、経済学史学会大会、経済思想研究会(2012年11月25日)、リカードウ研究会(2012年12月22日)において、口頭発表を行った。
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