本研究の目的は、スラッファ編『リカードウ全集』刊行(1951年-1973年)以来の日本のリカード研究と欧米のリカード研究の状況を比較することを通して、両者間の異同、各々の特色を解明することである。このために平成25年度は、前年度までの作業を受けて以下の作業を行った。 (a) 前年度に引き続き、研究課題に関連する資料・文献の調査・収集を実施した。また、経済学史学会全国大会(2013年5月25日-26日)、マルサス学会(2013年6月29日-30日)リカードウ国際会議(2013年9月9日-12日、9月17日-18日)他の機会を利用して、内外の研究者からの情報収集に努めた。 (b) 前年度に引き続き、最近20年間の研究史に焦点を絞り、日本のリカード研究と欧米のリカード研究に関連する資料・文献の包括的な整理・検討を実施するとともに、羽鳥卓也、中村廣治、千賀重義のリカード労働価値理論の研究に焦点を当てながら、日本のリカード研究の独自の成果と貢献を明らかにするために検討を進めた。また、これらと関連する課題として、リカードの経済学の普及過程におけるハリエット・マーティノーの貢献やその他の諸問題について、テキストマイニング分析を用いて分析を試みた。さらに、近年、佐藤滋正が『リカードウ価格論の展開』(2012年)において、リカード『原理』後半部の論争的諸章の再検討と再評価を行ったことを受けて、この著書を検討し、日本の最新のリカード研究の成果の一つとしてその評価の確定を試みた。 (c) 以上の研究の成果に関する論文を執筆し、『人文社会論叢』第31号、『マルサス学会年報』第23号、『経済学史研究』第55巻第2号に発表するとともに、第23回マルサス学会大会(2013年6月29日)、リカードウ国際会議(2013年9月11日)、仙台経済思想史セミナー(2014年3月30日)において、口頭発表を行った。
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