研究概要 |
1,アダム・スミスの自由主義論を平等論との関連という視角から考察し,経済学史学会大会(5月)の共通論題で「アダム・スミスの社会的自由主義」として研究発表し,その後に論文として刊行した。 2,これまで行ってきたプラトンとアリストテレスの正義論および平等論に関する研究を継続し,とくにプラトンとアリストテレスの「2種類の平等」論について再検討した。 3,トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』における平等論を,アリトステレス平等論の継承と批判という視角から考察し,アリストテレス研究会(8月),哲学研究会(9月),ヒューム研究学会(9月),社会思想史学会(10月),イギリス哲学会(3月)で研究発表した。 4,中国南京師範大学の林祥瑜講師と,南京市内4大学における経済格差と教育格差について共同で調査・研究し,共著論文として刊行した。 5,アダム・スミスの平等論について人間発達の経済学日中会議札幌集会(9月)で研究発表(英語)したあと,内容を拡充して英語論文を執筆している。2013年度に国際学会(ESHET)で報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2013年は本研究課題の最終年度に当たるため,4年間の研究成果をとりまとめることを最大の目標としている。そのために,とくに次の諸論点を中心に考察する。 1,プラトンとアリストテレスの平等論を再検討し,とくに2人の「2種類の平等」論の理論構造をより詳細に分析する。 2,ホッブズ平等論に関しては,自己保存の利己主義的原理と黄金律の義務論的原理の2種類のメタ自然法原理の関係について,古代のレトリック論の批判的継承という観点から考察する。 3,アダム・スミスの平等論に関連して,次の4点を中心に考察する。すなわち,(1)出来高賃金論,(2)未開・文明社会比較論,(3)所得分配の長期動態論,(4)課税による所得再分配論である。これら4点を全体として考察することによって,スミス平等論に関する従来の対立する諸解釈がいずれも一面的であることを示して,新しい総合的なスミス像を追究する。 4,カール・マルクスとアマルティア・センの平等論を,アリストテレス的平等論の継承と批判の両面から考察する。
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