まず、論文「R.オウエンの経営思想―労働者の困窮改善策―」において、ロバート・オウエン(Robert Owen)の経営思想の検討を通じて以下の点を明らかにした。第一に、オウエンは人的資源の役割を高く評価し、人的資源に対する投資の必要性を説いた。そして、人的資源投資は、労働者の経済的水準の向上だけでなく、利潤の増加をも実現しうることを明らかにした。第二に、オウエンは、労働者からのゆるぎない支持が企業経営には不可欠であることを知っていた。第三に、オウエンは、性格形成原理に即した教育による労働者の意識変革を重視した。第四に、オウエンの経営思想上の問題点として性格形成原理に対する彼の強い信頼があり、性格形成原理から十分な教育効果が得られない可能性をオウエンは想定していない。第五に、オウエンの経営思想の別の問題点を指摘した。それは、分業を否定し、協働を肯定する彼の見解である。しかし、分業と協働は、本来、オウエンの主張するように概念的に対立するものではなく、分業を導入していたとしても、共通の生産目的の達成に向けて従業員同士が協働することは可能であるし、そう捉えた方がむしろ自然である。 次に、2013年度は本研究課題の研究期間の最終年度にあたるため、本研究全体の研究成果報告書を作成した。研究成果報告書は、第1章「イギリス古典派経済学における分業と協働」、第2章「イギリス古典派経済学における人的資源管理」、第3章「バーナードとイギリス古典派経済学」から構成され、簡易製本したうえで関連する研究者に配布した。
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