研究課題/領域番号 |
22530200
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
落合 功 広島修道大学, 商学部, 教授 (10309619)
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キーワード | 国益 / 池上幸豊 / 砂糖 / 国産化 / ネットワーク / 国権 / 国策 / ネットワーク |
研究概要 |
池上家は、武蔵国川崎領大師河原村(現川崎市)の名主を代々務める家である。とりわけ池上幸豊(太郎左衛門)は、砂糖の殖産化の推進に尽力し、埋め立てによる新田開発(海中新田開発)や、砂糖殖産化事業を積極的に推進した。 池上幸豊は、農民身分として名主役を務めるだけでなく、当時の権力者である田沼意次を始めとして、趣味として嗜んでいた和歌の師匠である成島道筑、医学者でありながら高麗人参の育成に尽力した田村藍水、学者としてエレキテルなどの発明をした平賀源内など、歴史的にも著名な人物との付き合いがあった。かかる視点は、身分制社会の近世において、身分を超えた広い人間関係を示すものとして注目できる。そして、本研究テーマの主題である国益という表現を使用し、甘蔗砂糖の育成を推進した人物としても知られている。(拙著『近世の地域経済と商品流通』岩田書院、2007年)。恐らく、池上幸豊は、日本の歴史上、国益という表現を初めて積極的に使用し、国益を着想の軸に据えた発想(=国益思想)で行動した人物といえるだろう。 本研究では、かかる池上幸豊を取り上げ、国益思想に至る背景について、池上氏自身からと社会的な背景の二つの側面から明らかにしつつある。 また、同時に、国益思想がつながる、国権の問題について、これまで自身が研究テーマとしていた大久保利通を再検討を進めた。 また、個別事例だけでなく、大久保利通での国権の問題を検討しているように、近代以降の国権、国策などの問題についても検討を進めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度は、国際学会での報告、その成果発表。Bettina Gramlich-Oka and Gregory Smit 編『Economic Thoght in Early Modern Japan』(Brill Academic Publish、2010年)所収の、拙著「The shift to domestic sugar and ideology of the national interests'」の翻訳本刊行計画など、着実に発表、・論文成果を得てきている。ただ、関心の幅が、国権、国策などの問題にも広がりつつあり、本研究課題としての最終目標である著作出版については、若干時期がずれ込む予定で、本年度中に執筆終了を考えたい。
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今後の研究の推進方策 |
池上幸豊の国益思想について、これまで収集した史料を中心に著作としてまとめる。また、翻訳書の刊行(これは共同作業)などにも努力する。また、新たな研究展望としての、国権、国策の問題については、研究報告や論文発表などを通じて成果を提示していきたい。
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