研究概要 |
確率的優位(SD)は,所得分布や貧困水準,投資戦略,プログラム評価など,不確実性を伴う様々な分野で用いられており,企業戦略や政策決定の重要な道具の1つとなっている.本研究の目的は,ベイズ法によるSD及びプロスペクト確率的優位(PSD)の評価法の開発とその経済データへの応用である.SD及びPSDの統計的評価法を開発することによって,これまでにSDやPSDに関する理論研究が行われてきた所得分布,投資戦略,プログラム評価といった分野の実証分析に新たな分析道具を提供することとなる. また,所得分布や貧困に関する研究分野では,不平等度や貧困度などの経済状態を表す尺度を多次元で捉えようとする研究が近年盛んに行われている,本研究では,これに対応して,SDやPSDを多次元に拡張することも考えている. 具体的な研究実績として,平成22年度は,不平等度や貧困度などの経済状態を表す多次元の尺度に確率的優位を応用するための方法として考えられるコピュラに関する文献の収集・整理・分析を行い,その観光地選択の問題への応用可能性を考察した.コピュラと確率的優位を用いた分析は,次年度以降,継続して研究していく予定である.また,確率的優位を貧困問題に適応するための予備的考察として,日本版General Social Surveys(JGSS)のデータに対してベイズ法を適用した実証分析を行い,複数のディスカッション・ペーパーにまとめた.これらのディスカッション・ペーパーは,現在,海外の専門誌に投稿中である.また,複数の大学で本研究に関する研究発表を行った.
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