研究概要 |
確率的優位(SD)は,所得分布や貧困水準,プログラム評価など,不確実性を伴う様々な分野で用いられており,政策決定の重要な道具の1つとなっている.本研究の目的は,ベイズ法によるSDの評価法の開発とその経済データへの応用である. 平成23年度は,前年度に引き続き,下記の点について研究を行った. (1)個人が主観的に所属していると考えている社会的階層について,所得などの経済要因や年齢,性別などの人口学的要因を用いて統計分析を行った.この分析の特徴は個人が貧困水準にあるか否かを考慮していることである.この研究は日本版General Social Surveys (JGSS)のデータを用いた実証分析であり,その研究成果は英文論文にまとめられ,海外の査読誌に投稿した.現在の段階は,専門誌から送られてきたレフェリーコメントを考慮して改訂作業中である. (2)所得分布や貧困に関する研究分野では,不平等度や貧困度などの経済状態を表す尺度を多次元で捉えようとする研究が近年盛んに行われている.本研究では,これに対応して,SDを多次元に拡張することを考えている.これに関連して,現在,多次元尺度に関する文献を検討するとともに,応用分野として仕事の満足度の分析への適用を考えている.具体的には,連合総研の「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」のデータを用いた実証分析を進めている. (3)ポリコリック相関係数及びポリシリアル相関係数に対応した偏相関係数のベイズ推定を考察した.ポリコリック相関係数及びポリシリアル相関係数は質的なデータに関する多次元尺度と密接な関係があり,本研究課題の延長線上に位置するものである.研究成果は英文論文にまとめられ,海外の査読誌に投稿中である.
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