本研究では、家計貯蓄率に対する、家計の世帯主の年齢(年齢効果)、家計の世帯主が属する誕生年のコーホート(コーホート効果)、及び調査年(年効果)をセミパラメトリック計量モデルで推計した。『全国消費実態調査』は,一般世帯を「単独」、「夫婦のみ」、「夫婦と子」、「ひとり親と子」、「その他」に区別する分類を利用して、この分類別にそれぞれ、貯蓄率に対する年齢効果及びコーホート効果と年効果を推計した。 コーホート効果と年効果の推計値を利用し、1990年代初頭以降の日本における人口構成の変化が家計貯蓄率の低下に与える影響を検証した。『全国消費実態調査』の家計ミクロデータを利用し、主な世帯属性別に年齢貯蓄効果を推計した。そしてこの推計値を、1990~2005年における実際の年齢構造に適用した。その結果、貯蓄率に対する人口構成の変化の影響は僅かで、概ね1%ポイント未満であった。近年の日本における貯蓄率低下が主に高齢化に起因するという従来の見解は、家計ミクロデータを利用した本論の分析結果から立証されないことが判明した。 その分析結果を記載した論文をThe 13th International Convention of the East Asian Economic Association (シンガポール)の学会で報告した。そして、得られたコメント等を反映して再改訂し、「平成24年度公的統計のミクロデータの利用に関する研究集会」にて発表した。
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