25年度の研究では、本研究で、これまで、開発・改良してきた相互依存諸測度の統計的推定・検定をもちいて、アメリカ経済の経験分析を実行した。応用のための分析対象データとして、アメリカマクロ・金融経済データのうち、期間スプレッド、GDP、消費者物価指数を採用した。期間スプレッド以外は、それぞれ対数差分について1959Q1-2013Q4の期間の4半期データを用いた。データは全期間と、1959Q1 - 1998Q4、1993Q1- 2013Q3への2期間分割、および1959Q1-1984Q4、1985Q1-2013Q4への2期間分割にたいして、分析対象となる多変数のそれぞれの組にたいして、別個の多変量ARMAモデルを当てはめて、3段階ウィトル最尤法によって、モデル母数を推定した。推定モデル母数にもとづいて、条件付け変数と原因変数と結果変数のさまざまな組み合わせについて、一方向効果測度、相互測度、連関測度、それぞれについて、全測度、周波数別測度を推定して、因果効果の定量的特徴を検出した。また、さまざまな変数のペアと条件変数の組について、一方向因果効果ゼロの帰無仮説のモンテカルロ検定を実施した。大きな特徴としては、単純因果性、偏因果性のいずれの観点からも、前半期では、貨幣ストックから産出量への有意な因果性が検出されるが、後半期では、これが因果性が消滅した。さらに、条件変数の選択に依存せずに、期間スプレッドから産出量への因果性は、前期では有意であるが、後期では弱いことが検出された。これは他の方法による先行研究の結果と概要において整合するものである。本研究の新しい特徴はこれを周波数別に検定したことにある。さらに、25年度の研究では、まず、因果性と統計的推測、および、マクロ・金融変数間の因果性、予測性に関する大量な関連文献の論点整理と本研究の位置づけを行った。
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