アメリカに次ぐ第二の大国となった中国にとって経済発展と地球環境目標は焦眉の課題である。この研究は、日系企業の直接投資や現地生産がこの目標にどう関わっていくのか、日本経済にどのような影響をもたらすかを、実証的に検証することにある。このため、初年度は既存研究の整理とともに、研究協力者である中国の江南大学商学院武戈教授らの協力を得ながら調査研究の準備を行った。 マイクロな企業個別情報をマクロ情報として集約していくには、産業連関表のような多部門経済分析の枠組みを利用することが適切である。このため、中国の地域格差を考慮した日中地域間産業連関表、日中地域産業連関表、国際地域間表による分析道具の検討を行ない、その一部をモンゴルで開催された北東アジア経済フォーラムにて報告した。近年日本企業も中国、アジアへの進出を増加させ、相互補完的なグローバルな生産システムを構築している。その結果、日本、アジアの産業・貿易構造の変化と両者の緊密化がもたらされている。このような相互依存を分析するのに国際産業連関表の役割は大きい。日中間の国際産業連関表の作成は重要であり、現在経済産業省プロジェクトで2007年表を作成中であり、報告では2000年のアジア国際産業連関表を用いながら、どのように分析結果が期待できるかを示した。 また、研究分担者の木下宗七は、産業別集計データによる直接投資行動と貿易パターンの変化に関する分析を行う。このため、各国・商品別の貿易行動を価格面と数量面の側面から測定するための貿易指数の作成と評価に関する問題を取り上げた。具体的には貿易価格指数に焦点を合わせ、まず、既存貿易指数作成方法のサーベイを行い、次いでアメリカとドイツについて貿易単価指数と調査価格指数の時系列的変動の回帰分析を行った。最後に、単価指数作成での商品分類の水準(桁数)と単価指数の変動バイアスの関係について分析した。
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