世界第2の経済大国中国にとって経済発展と地球環境目標の達成は焦眉の課題である。この研究では中国における直接投資や現地生産が、日中経済にどのような影響をもたらすか、実証的に検証する。特に我が国企業の中国への進出は電気機械、輸送機械部門を中心とし、現地企業とは競争的関係と同時に協調的関係をもつなど、多様化している。中国における日経企業の直接投資、現地生産に関するミクロ情報を活用した日中地域間産業連関表の枠組みで日中の全経済的な影響分析を行った。 我が国企業の中国への直接投資額は近年著しく増加しており、その結果現地生産規模も拡大してきている。現地生産の拡大は日中の貿易構造の変化をもたらして、日中の相互依存関係もより強くなってきている。このような関係を経済産業省が作成した2007年日中国際産業連関表を用いて分析することができる。日系企業の現地生産については経済産業省の海外事業活動基本調査があり、ここではこの3600事業所に関するミクロ情報を産業連関表の部門に合わせて再集計し、日系企業の中国での現地生産を陽表的に取り込んだ産業連関表を作成した上で、日系企業の生産する最終需要の付加価値要因分解と、日本から中国への生産シフトがもたらすシミュレーション分析を行った。 また、昨今の日本の電気・電子産業における国際競争力の変化は2007年時点の状況とは大きな変化をもたらしている。そこで、日本の競争力の変化を検討するため、経済の長期と短期の動向を判断する際の重要な指標である日本経済の潜在成長率とGDP ギャップについて検討した。ここでは、これまで比較的に高い潜在成長力と大きなGDPギャップを発表してきた宍戸氏と丹羽氏の推計結果を取り上げ、どうして内閣府や日本銀行のものと開差が生ずるかを、要素分配率、TFP成長率、潜在要素投入量の3つの側面から検討した。
|