CGEモデル(Computeted General Equilibrium Model)は、一般均衡理論に基づいて、経済政策が各産業部門に与える影響を産業連関表から得られるデータをもとに推定するモデルである。このモデルは1990年代以降、わが国でも政策評価を行う際にさかんに用いられるようになった。しかしながら、政策評価を事後的に検証するためには、CGEモデルではなく、Gravity Model(重力モデル)が用いられている。 安藤(2007)は、我が国の自由貿易協定に関する事後評価の例である。安藤(2007)のモデルはGravity Modelによってモデルのパラメータを推計し、貿易額の推計値(理論値)と現実の値を比較することで自由貿易の事後評価を行っている。安藤(2007)の対象は日本とメキシコ、シンガポールに関する自由貿易協定の効果である。 しかし、近年の研究により、通常のGravity Modelにはいくつかの問題点があることが指摘されている。Carrere(2006)、Melitz(2007)、Cheng and Wall(2003)などがその例である。 安藤(2007)のモデルはデータをプールし、Gravity Modelを通常の最小二乗法を用いて推計を行っているため、本研究では上記の素朴なGravity Modelへの批判を考慮したうえで、安藤(2007)の研究結果を再検討した。その結果、推計方法の違いがGravity Modelのパラメータと有意性に大きな影響を与えることを我が国のデータを用いて確認した。
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