自由貿易協定の経済効果などを推計する際には、二つのモデルが用いられてきた。一つはCGEモデル(Computeted General Equilibrium Model)であり、もう一つは、Gravity Model(重力モデル)である。前者のCGEモデルは、一般均衡理論に基づいて、経済政策が各産業部門に与える影響を産業連関表から得られるデータをもとに推定するモデルである。このモデルは、経済効果のシミュレーションを行うモデルであり、政策決定前に経済効果を推測するために用いられる。その一方で後者のGravity Model(重力モデル)は、政策が行われた後の効果を推定するために用いられている。 本研究は、この二つのモデルの推計による差異を検討するものである。このような研究はこれまで内外に例が無く、意義があるものであると考える。 すでに我が国の自由貿易協定について先行研究とは異なる推計方法を用いてGravity Modelを用いて推計しているが、昨年度は、これをさらに詳細に分析する事を試みた。具体的には、これまでGravity Modelについては、一国のパネルデータで推計が行われていたが、これを改め、産業分類ごとに検討を行っている。先行研究で産業分類ごとのGravity Modelを行っているものはほとんどなく、もし存在したとしても、極めて大くくりの産業分類での分析しかなされていない。自由貿易の効果は、各産業部門で異なる事が容易に予想され、また、その効果は相手国ごとに異なってくるはずである。作業量は極めて多くなるが、推計がなされれば、有益な結果となるであろうことが想像できる。
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