本年度は、主に、後半で作成される都市空間経済システムモデルで想定される、パラメータやモデルのフレームワーク検証のために、国内外(主に先進工業国)の主要都市における労働賃金、地代等の基本データの収集と、企業と家計の立地パターンの調査を行った。中間財生産の減少とそれによる単純労働者の当該都市からの流出に伴い、都市構造がどのように変化したかについても調査した。また、最終財生産企業は、生産上必要な高度な情報を得るため、都心に集積する傾向があることが理論上予想され、実際の集積状況についても調査した。また、当該都市で実際に実施、あるいは計画されている政策についても情報を収集した。 ここでは、調査対象地域の選定、地代データの収集、企業による土地利用の調査が主な内容であった。国内主要都市の調査と(福岡、神戸)、海外では、アメリカ合衆国の主要工業都市(シカゴ、シアトル等)を想定している。最終財生産企業の集積の様子、中間財生産企業の減少、熟練労働者、単純労働者の立地の動向について調査を行った。 また、理論的な裏付けのためにモデル分析を行い、後述の学会発表を行った。最終財企業と中間財企業の2種類の企業を想定し、家計を含めた都市の均衡形状を分析した。その結果、いくつかの興味深い均衡都市構造が出現することを例示できた。特に、非対称な均衡都市形状は大変興味深く、現実の都市形状が必ずしも対称になっていないこと、その発生理由が中間財の輸送費率と中間財企業の当該他企業とのアクセス費用率にあることを示すことができた。
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