本研究は、経済のグローバル化を主な原因とする都市内立地パターンの変化を、従来の主要な立地パターンの変化の要因である、技術革新の影響も考慮に入れた、都市構造の一般均衡モデルを構築して分析することを目的とする。また、都市内労働者の多様性の観点から、テレコミューティングが都市構造に与える影響についても分析を行った。 ここ数十年、先進国の大都市の都市構造は、経済のグローバル化によって、大きく変化していると考えられる。具体的には、従来、原料は輸入するものの、生産においてはひとつの都市圏で完結していた生産が、中間財の海外生産が可能になるに従って、先進国の大都市において、最終財の生産に特化するようになってきている。この原因は、中間財生産技術の海外移転、中間財輸送コストの低下である。その背景には、移転先国の経済発展により、質の高い中間財の生産が可能となったこと、生産技術、輸送技術、通信技術のそれぞれの急激な発達が挙げられる。 日本の都市内における最終財や中間財を生産する企業の立地パターンを、中間財の生産パターンを含めて一般均衡モデルを構築し、分析を行った。その結果、いくつかの興味深い均衡都市構造が出現することを例示できた。特に、非対称な均衡都市形状は大変興味深く、現実の都市形状が必ずしも対称になっていないこと、その発生理由の一つを示すことができたことは大きな成果である。 また、都市労働者の多様性に伴い、テレコミューティングが行われる場合、企業における実施割合は、テレコミューティング費用の内、固定費用に決定的に影響を受けることが確かめられた。また、都市規模(企業数)が大きくなることによってもテレコミューティングの割合は増加する。これらのことは、近年の固定費用を含むテレコミューティング費用の低下により、大都市の多くの企業において、テレコミューティングが実施されている現状を裏付けている。
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