研究課題
本研究では、長期的な自営業の減少理由と新たな自営業の台頭可能性について考察した。1980年代以降、日本では自営業が趨勢的に減少傾向にあるが、その傾向に歯止めをかけ経済全体の雇用創出につなげるには、税制優遇などの選択的・集中的な個別企業支援が重要である。背景として厚生労働省『雇用動向調査』を用いた実証分析を通じ、雇用創出の約4割は約3パーセントの企業から生じていることを明らかにした。 本研究では震災前から東日本大震災の被災地の一つとなった岩手県釜石市で企業や自治体等に対する調査を行ってきた。震災後にはその知見を活かし、自営業支援の観点を含む震災復興につながる雇用政策を考察した。そこでは雇用調整助成金の考察や自営業を含む中小企業に対するグループ補助金等の効果と課題を明らかにした。 新たな自営業に関する大量データを用いた定量分析も行った。近年、企業によって業務委託契約従事者もしくは個別請負業と呼ばれる自営業の活用が進んでいる。そこで業務委託契約従事者を活用する事業所特性について、厚生労働省が実施した調査の個票データを用いて実証分析を行った。その結果、次の点が明らかになった。(1)業務委託契約の活用は運輸業と情報・通信サービス業で進んでいる。(2)正社員のいない職場で働く「独立運用型」と多数の正社員のもとで働く「組織活用型」の業務委託契約が併存する。(3)業務委託契約は、経費の大半を会社が負担する「特殊業務型」と、経費を従事者本人が負担する「一般業務型」の両方がある。(4)業務委託契約の途中打ち切りは、業務委託が事業にとって不可欠な場合ほど生じやすく、事業の質を確保する経営戦略の一環として活用されていること等である。 また総務省『社会生活基本調査』を定量分析し、社会的に孤立状態にある「孤立無業者」が増加していることを指摘し、自営業を含む就業支援策の必要性を明らかにした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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一橋大学経済研究所世代間問題研究機構ディスカッションペーパー
巻: 602 ページ: 1-9
日本労働研究雑誌
巻: 622号 ページ: 46-59
Japan Labor Review
巻: Vol.9, Number 4 ページ: 86-104
http://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/mystaff/genda.html