三年間の研究の最終年度に当たる平成24年度においては、これまでの研究成果を論文にとりまとめることに重点を置いた。本研究で当初から中心テーマとして設定していた企業立地と生産性の関係について、研究代表者と研究分担者の共著論文としてまとめ、国際的査読誌掲載に至った。この他、研究の経過について、複数の成果物をディスカッション・ペーパーの形式でとりまとめた。その過程で明らかとなった今後に残された課題について、研究代表者と研究分担者で討議した。 このうち、Regional Studiesに掲載された論文は、企業(正確には事業所)の生産性を工業統計のミクロ・データを用いてガンマ分布を推定するなど計量分析し、これまで先行研究で繰り返し分析されてきた1次・2次のモーメント(平均・分散)ではとらえられない歪み(skewness)に着目し、市場ポテンシャルなどの経済地理上の変数との関係を探った。特に、周辺に比べて中核となる大都市では、競争の激化により低生産性の企業が淘汰されるだけでなく多様な生産性の企業が共存できる面があることなどを見出した。 この他、企業組織(複数の工場を持つ企業の一事業所か企業にとって単一の事業所かの選択、本社を事業所と同じ地点に立地させるか分離するかの選択、海外アウトソーシングする際に本社の組織構成をどう選ぶか)との関係を分析したのに加え、輸出(輸出企業と非輸出企業の生産性を比較したプレミアム)との関係についても分析に着手した。本研究は、日本企業の国内立地を分析対象としたものであったが、最終年度におけるこうした分析への着手により、グローバル化時代に適した研究につながったものと評価できる。
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