研究課題/領域番号 |
22530221
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
芹澤 伸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90303106)
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研究分担者 |
脇田 成 首都大学東京, 都市教養学部, 教授 (60242046)
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キーワード | 文化の多様性 / 文化政策 / 消費の外部性 / 習慣形成 / 知的財産 |
研究概要 |
本年度の成果を2つの項目で示す。 (1)理論分析 消費者は多様な財を組み合わせて消費する(love of variety)が、Bourdieuが論じる文化的再生産にもあるように文化的な財の消費には人々の習慣的な行動が大きく影響を与える。我々は、習慣形成を「addiction(前期消費量が次期消費に正の効果をもたらす)」、あるいは「saturation(前期消費が多いと、心のストックが蓄積され、次期消費に負の効果をもたらす)」の2つに分け、消費者個人の消費の外部性がもたらす習慣形成のモデル化を試みてきた。とくに文化や産業が新規に創出される時、既存の財カテゴリー内の消費の外部性が重要な役割を演じると考え、消費の外部性は、個別の財について時間を越えた消費の外部性が一対一(commodity specific externality)で生じるのではなく、その財が属すカテゴリー全体を過去にどれだけ消費したかに依存する(category-wide externality)」として外部性を表現し、財のカテゴリー毎に消費の外部性を形成する消費行動を陽表的にして新たなモデルの構築を試みた(Serizawa and Wakita, 2012)。 (2)文化・知的財産と国際貿易 国際寡占市場における企業行動を分析するため、国際貿易の視座から文化を考察した。経済のサービス化が各国の経済、貿易構造を変えている現状から、文化そして知的財産とのかかわりが深いサービス産業、即ち映画やアニメ等の所謂コンテンツ産業、に注目する。関連する貿易政策や文化政策をふまえ、本年度は準備段階として国際貿易やサービスの貿易に付随する制度をまとめ、主として我が国のサービス産業とその構造を俯瞰した(芹澤(2012)、脇田(2012))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に沿い文化的財取引における企業行動を分析した。即ち(1)理論モデルとして、カテゴリー内の消費の外部性(消費者)を導入した独占的競争モデルの構築を試み、(2)国際貿易における文化・知的財産の取引を、サービス貿易の現状を踏まえて概観した。これらは今後予定する各国の貿易政策・経済政策の比較考量、分析への足がかりとなる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)製品の垂直的差別化問題も含め理論モデルを精緻化し、サービス産業における創造的産業の経済・貿易政策の各国比較を念頭に研究を行う。 (2)引き続き、国内外での研究会、学会や和洋学術誌において研究成果を報告するよう努める。
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