本研究プロジェクトの研究目的と平成22年度研究実施計画に従い、今年度は「完全分離法の並列的拡張」による多地域間連結産業連関表作成の理論と手順の開発を行うとともに、実際に、公表されている都道府県の産業連関表と全国産業連関表を用いて、多地域間連結産業連関表を作成し、地域経済分析の応用上の問題に取り組んだ。 具体的には、第1に、完全分離法の並列的拡張の理論と実際上の手順については、共同論文である浅利一郎・土居英二[2011]「完全分離方の並列的拡張による多地域間連結産業連関表の理論と手順」にまとめ、発表した。第2に、開発した理論と手順に基づき、全国、静岡県、愛知県、山梨県、神奈川県、東京都、千葉県の全国および7都県の平成17年産業連関表(内生108部門表)を用いて7地域間連結産業連関表を作成した。その際、地域間の移出入を推定する方法として、物的生産部門における物流統計の利用、サービス部門等でのNon-survey法であるグラビティ・モデル等の利用などいくつかの新たな試みを行った。そして、第3に、本研究プロジェクトとは別の枠組みで行った7地域間連結産業連関表を用いた地域経済分析のケース・スタディから、本プロジェクトへの反映として、家計内生化モデルを多地域間連結産業連関分析に導入する理論と手順の拡張を行った。 7地域間連結産業連関表を用いた地域経済分析のケース・スタディとは、土居英二が代表として他7名の研究チームで引き受けた静岡県空港利用政策室からの委託調査「富士山静岡空港の経波及効果分析」である。これは本プロジェクトにおける理論と実際上の手順の開発、7地域間連結産業連関表の適用などにより初めて可能になった地域経済分析であると同時に、本研究プロジェクトの多地域間連結産業連関分析の理論への反映など相互に補完し合う形で進めてきた。
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