本研究は、5年毎に公表される全国産業連関表や都道府県産業連関表、そして地方自治体や地域シンクタンク等により適宜作成・公表される地域内産業連関表を基にして、全国と複数地域の経済関係を把握する地域間産業連関表を作成する理論と実際的方法を開発し、地域間の産業連関を踏まえた経済政策効果分析等を行うことを目的としている。 1.本研究はそのために、理論的には、準備段階において全国表と一地域表の2地域間連関のための理論として定式化した「完全分離法」を、空間的な意味で外延的に拡張する「並列的連結」の方向と地域内の内包的な連関を見る「垂直的連結」の方向へ拡張・整備し、既存統計を用いて地域間産業連関表を作成のための理論的基礎を確立した。 2.完全分離法の拡張により複数地域の地域間産業連関表を実際に作成するには地域間経済取引を反映する「移出入額」を確定する必要があるが、そのための新たなノン・サーベイ法としてEstimation Methods Assuming Linearity between E and X:EMALEX法を開発した。ただし、EMALEX法についてはノンサーベイ法としての精緻化と検証の段階であり、方法としての体系的な確立は今後の課題として残されている。 第3に、本研究の並列的連結の応用分析として、全国及び静岡県外5都県を連結した7地域間連結産業連関表を作成し、経済波及効果分析に適用した静岡県庁委託調査研究「富士山静岡空港地域経済波及効果分析」(静岡大学委託調査研究チーム:土居英二)がある。垂直的連結の理論とEMALEX法により作成した垂直的連結・地域間産業連関表を用いた応用分析として「「全国」-[静岡県」-浜松市の連結産業連関表とその応用分析」(2013年)がある。 研究成果については報告書を作成し、関係する研究者だけでなく都道府県等の統計関係の実務部署等にも配布した。
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