家計と世代を理論的に扱い、実証研究でその行動を明らかにするためには、まず家計の行動を一般均衡(動学)モデルの中に持ち込むことが必要となる。現段階は、一般均衡分析の枠組に家計が組み入れられた理論モデルの形が明らかにされていないことから、本年度は、1)家計内生産関数を内包する一般均衡モデルの構築に必要となる要素技術(基本的概念)の整備、2)その要素技術を取り入れた一般均衡モデルの定式化、3)家計行動を定量的に捉えるための種々の統計データーの収集と整理を実施した。 22年度の研究成果としては、1)1部門モデル(必然的に一般均衡モデル)における家計内生産関数の位置付けの明確化、2)2部門モデル(家計と雇用部門)における家計内生産関数の定式化をほぼ完了している。一方で、2部門を仮定した場合の本来の家計内生産の持つインプリケーション(市場から購入する財と家計内における生産活動を組み合わせることで直接消費することのできる財・サービスが生産される)との理論的扱いに係る諸点に解決に至ってない部分が残された。この部分は、23年度の重点研究項目として早急の解決を目指す。 研究を通し得られた成果については、22年9月に行われた家族をテーマとする京都大学-ウイーン大学との共同研究会、同11月に名古屋大学で実施した本科研の研究報告会において報告し、種々の論点についての意見交換を行った。さらに、23年2月には、この分野の先駆的研究者であるシカゴ大学のベッカー教授に研究の進捗状況について報告をし、今後明確化が必要となる点についてのコメントを受けている。23年度への繰り越し分については、23年6月11-12日に早稲田大学にて開催された日本農業経済学会(震災により延期)に参加し、関連研究者との意見交換を行った。
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