研究課題/領域番号 |
22530225
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
溝端 佐登史 京都大学, 経済研究所, 教授 (30239264)
|
キーワード | 多国籍企業(transnational corporation) / 直接投資(direct investment) / オフショア(offshore) / 近代化(modernization) / コーポレートガバナンス(corporate governance) / 内部化(internalization) / 新興市場(emerging market) / 制度(institution) |
研究概要 |
本研究は、ロシア多国籍企業の形成要因、経営戦略を分析するとともに、移行諸国・先進諸国における多国籍企業との国際比較を行い、それを通じて多国籍企業の立地理論に貢献することを目的としている。前年に行った現地調査と事例研究に基づいて、(1)企業と社会に関する論考を公表し、(2)多国籍企業の形成要因・経営戦略の実証研究に着手し、国際コンファレンスを中心にして研究成果を公表した。前者の課題はソウル大学での招待講演などの形で公表した。後者について、多国籍企業が国内企業の組織・行動を海外に移植しており、複雑な所有権関係を構築していること、それゆえに伝統的な多国籍企業理論において導出される進出動機(所有の優位、内部化優位性、立地的優位)も作用しているが、それ以上に企業特殊的優位と本国優位性要因が働いていること、国内の経済政策が多国籍企業の海外進出を導くこと、オフショア型多国籍企業がロシアにおいて共通して観察されることを、実証的に明らかにした。本研究成果は、2011年10月比較経済体制学会全国大会、12月国際コンファレンス(京都大学共同利用・共同研究拠点プロジェクト)、および論文の形で公表している。関連する現地調査を11月にベトナムハノイで実施した。世界的にも最先端の多国籍企業研究成果であり、本研究はイギリス・韓国およびロシアの専門研究者(12月に日本に招へい)との意見交換のなかで成果として取りまとめている。 本研究課題に関連して、次の3つの点についても可能な限り研究成果を公表した。(1)世界経済危機の伝播経路とその影響、(2)ロシアの経済政策の根幹をなす近代化構想の背景と内容、(3)比較経済学の方法と新しい理論的枠組み。市場形成下のロシアでの多国籍企業を研究する上で、この3つの点はきわめて重要な論点となるものであり、いずれのテーマに関しても著作、国際学会報告、論文の形で公表している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事例研究を中心にした実証研究成果を積み上げ、かつロシアの専門研究者(ポリス・ヘイフェツ教授とルステム・ヌレエフ教授)を招へいし、ロシア多国籍化についての議論を徹底して行うとともに、国際的なネットワークを強固にした。また、12月現地調査では広範な研究者への聞き取りを行っている。さらに、アジアの多国籍企業との比較を韓国、ベトナムの研究者との共同研究で実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究を早急に欧文論文に仕上げ、国際学会で公表する。さらに、本年度予定している企業への聞き取り調査は可能な限り実施するが市場環境が厳しい中では調査には困難が予想され、それゆえ調査経験とデータをもつロシアの共同研究者・共同研究機関との協力を強めて、より広範囲の多国籍企業の行動・制度・社会とのかかわりに関するステークホルダーの利害を明らかにする。また、近年この研究は新興国多国籍企業論として注目され始めており、その国際的な共同研究化を進める。
|