研究概要 |
新聞や著作物の再販は、独占禁止法(第23条)の適用除外で、再販価格維持が許されてきた。それだけでなくて、公正取引委員会の「新聞業の特殊指定」は、差別価格販売や定価割引、新聞社が実際の販売部数以上を販売店に押し付ける、いわゆる「押し紙」を禁止することであった。この再販制度のもとで、全国紙と大手の地方紙はカルテルを作ったのではないかと思います。この研究の目的は、そのカルテルの影響を数字で測定することです。 私の測定によると、もしカルテルがない場合と比べると、全国紙の購読料は一カ月500円引き上げられて(3925円まで)いる計算になります。これで、新聞の利益が150億円増えて、広告主と読者の消費者余剰が2850億円に減りました。死重的損失が利益より20倍ぐらいになります。その理由として、次の2点が挙げられます。ひとつは、新聞が水平差別財だからです。カルテルがなくても、大手新聞社は市場力を持っています。また、別の理由としては、新聞は両面市場のプラットフォームなのです。新聞社は読者にも、広告主にも媒体を売っています。広告主の需要は、新聞の発行部数に正比例します。購読料を引き上げれば,上げるほど、広告の流入は減ります。すると、新聞社の利益が減り、広告主の消費者余剰も減ります。私の推定によると、広告主の需要関数の弾力性は2.5です。
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