1. 国際的な政策競争を考察する場合には、政策の国際的な相違が貿易構造にどのような影響を与え、貿易構造の変化が国内の資源配分や経済厚生にどのように影響を与えるかを考察する必要がある。国内政策の一例として環境政策を取り上げ、その分析を行った。具体的には、企業の生産活動から発生する汚染を軽減/除去するような財(環境財)を供給する産業を導入し、環境財の購入に対する補助金や排出税が資源配分に及ぼす影響を分析するとともにそれらの最適政策について分析した。また、排出税の国際的な差異が環境財の国際取引を含めた貿易構造に及ぼす影響も考察した。 2. 次に、国際賃金格差と技術革新、産業集積に関する研究を行った。国際間に賃金格差が発生している場合、市場の大きな国に企業が集積するとは限らない。この場合、技術革新は賃金が低く、企業が多く集積しているか、もしくは市場が大きく、企業が集積している国で行われる。財の輸送費用が低下するにしたがって賃金格差の影響力が大きくなり、賃金の安い国への集積が進み、技術革新もその国で行われるようになる。グローバリゼーションの促進に従い、経済成長率は、上昇、低下、再上昇の方向に変化する。その間、企業の立地は、分散から、先進国への集積、再分散、さらに低賃金国への集積という方向で変化する。本研究は、政策競争が産業集積を通じて国際的な資源配分や各国の経済厚生に及ぼす影響を分析していく上での基礎となる。
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