本研究の目的は、枯渇性天然資源と蓄積可能資本が共にコミュニティーの共有資産になっているときに、「共有地の悲劇」が起こる可能性と、人びとの効用関数の性質の間にどのような関係があるかを分析することにある。 本年度は、コミュニティー構成員が自己の消費量の絶対値のみならず、他の構成員と比較してどの程度の消費をしているかを気にする場合の分析を行った。各構成員の効用関数が、自分以外のすべての構成員の消費量の平均値を含むと仮定し、その平均値が高くなればなるほど、自己の消費量は同じでも、効用水準は下がると考える。すなわち、消費における地位追求(status-seeking)性のもとで、将来にわたる効用の割引現在価値を最大化する最適消費量と最適資源採掘量の特性を導き出した。 この問題は、資源ストックが常に確実に把握されている場合には、すでに先行研究によって解かれているが、本年度の研究では、(1)先行研究が仮定していた効用関数と生産関数の間の特殊な仮定が成り立たない、(2)資源ストックの把握が不確実である、という条件のもとで分析を進めた。 (1)については、先行研究の結果を含む一般的な解を得ることができ、(2)については、不確実性の程度により、先行研究の結論が覆る可能性を示すことができた。
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