研究課題/領域番号 |
22530230
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
実積 寿也 九州大学, 経済学研究院, 教授 (20325690)
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キーワード | ブロードバンド化 / エコシステム / 中立性 / ネットワーク |
研究概要 |
ネット上のトラヒック混雑問題(ネットワーク中立性問題)に対するわが国政府の対処の特殊性と、消費者に対する情報開示の欠落の問題を中心に論文を作成し、内外の学術誌(Communications & Strategies ; Colnmunications & Convergence Review ;情報通信学会誌)に掲載された。また、2011年11月には国際学会(DigiWorld Summit 2011)から招待を受け講演を行った。講演においては、わが国におけるネットワーク中立性問題の現状とそれに対する総務省の対応方策について共同規制としての有効性の観点から分析を行い、わが国において現在講じられている解決策には「ISP市場の競争が十分であること」および「提供されているインターネット接続サービスに対する利用者のリテラシーが十分に高いこと」という二つの前提条件が存在しており、少なくとも後者については大いに疑問があることを指摘し、当該問題点を克服するために「ISPソムリエ」と名付けた技術的情報を解釈する専門家を育成する必要があることを主張した。本主張に関しては、同学会に参加した各国の有識者から有益なフィードバックを得ることができた。 加えて、前年度より引き続いて実施してきたいくつかの実証分析の結果を、ITS([国際電気通信学会]、6月、台北)および公益事業学会(6月、日本大学)で報告し、関連の学識経験者や実務家と意見交換を行い、今後の研究内容の改善に資する知見を得た。 また、年度末には、翌年度の研究課題であるISP市場における競争状況に関する分析の準備作業として先行文献調査等を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の二大目的の一つである「通信ネットワークに顕現しつつある供給制約に対処するための基礎的知見の獲得」については順調に進展しており、招待講演を要請されるなど当初の期待を大きく上回る成果が得られつつある。他方、「ネットワークとコンテンツの融合を活かす最適エコシステムを実現する規制枠組みの提案」については市場の変化が著しく、情報収集はやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
目的1「通信ネットワークに顕現しつつある供給制約に対処するための基礎的知見の獲得」については、ISP市場における競争状況についての実証分析を終えた後、ただちに研究書出版のための原稿執筆にとりかかる予定である。一方、目的2「ネットワークとコンテンツの融合を活かす最適エコシステムを実現する規制枠組みの提案」に関しては、携帯電話ビジネスをベースとしたビッグデータの二次利用に焦点を絞り研究を展開することを検討する。
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